13.KT法

 人間は無意識のうちに基本的な4つの思考パターン(何が起こっているのか。どうしてそうなったのか。どういう処置をとればよいのか。将来どんなことが起こるのか。)を使っているといいます。優れた経営者が利用している、この「共通の思考パターン」を形式化して様々な問題解決に利用しようという手法がKT法と呼ばれるものです。アメリカのケプナー・トリゴーが政府機関や企業内で行われている意志決定の方法があまりにも未熟であることを知り、欧米の一流企業1500社のトップの思考プロセスを抽出、分析、体系化し開発したものです。従来の問題解決や意志決定の内容が各部署や組織、立場だけの提案や問題指摘に偏っていたことや一部の有力者だけに依存してきた形式を払拭し、誰もがこの4つの分析方法で問題解決を進めることによって、最適な結果を導くことができるようになっているからです。
 このプログラムには4つの分析方法があります。
1.状況把握(状況分析)・・・ SA (Situation Appraisal)
2.問題分析(原因究明)・・・ PA (Problem Analysis)
3.決定分析(選択決定)・・・ DA (Decision Analysis)
4.潜在的問題分析 ・・・・・・・・ PPA (Potential Problem Analysis)

 KT法には以下のメリットがあると言われています。
1.問題解決や意思決定における時間や費用を減らすことができる。
2.情報の収集と利用の方法を改善することができる。
3.相手に自分の考えを正確に伝えることができる。
4.組織を構成する多数の人たちの意思を、無理なく一つの方向へ導ける。
5.各人がもっている知識・経験・情報・問題意識などを共有できる。
6.組織全体の思考の効率を上げることができる。
 要するに、現在の状況を正確に把握してもいないのに、いきなり問題究明に入っても正しい要因を知ることはできず、原因の究明もせずに決定だけを急ぐことは更なる問題を生むことに繋がってしまう。最終的な決定の結果、将来のリスク、問題発生の可能性を知り対策を用意しておくことが必要となるということをいっているのです。「ラショラル・プロセス(合理的思考手順)」と呼ばれるこのKT法は、富士通、マツダ、本田技研、東京ガスなど多くの企業に導入され、実績を上げています。
 現在、多くの企業はトップの決断や意志決定に全てが委ねられ、底辺で発生している問題解決にうまく対応できていない場合があります。その結果、現場の従業員は自ら顧客のトラブルやクレームに立ち向かうことなく、責任回避のための指示待ちの状況を生みだしてしまいます。もし、様々な部署や顧客との間で発生する問題に、現場で考え、最適な結果を導き出そうという姿勢がないのだとしたら、もはや、その企業の顧客はトップだけとしか繋がっておらず、そのトップがいなくなった時、顧客は全て去ることになります。工場を訪れるお客は工場の人間と、店を訪れる人間は店の人間と、現場を訪れる人間は現場の人間との間で発生するトラブルや問題を、現場の人間が会社のポリシーを伴った解決策として発揮していかなくてはならないのではないでしょうか。